【短編集】フルーツ★バスケット
誰よりも早く起きて、屋敷の朝を迎える準備に取りかかった。
食事に関しては、専属の方がいらっしゃるからそれ以外の事を。
裁縫も苦手だったけど、そんな事も言ってられないから、必然的に上達したかも。
あたしは、旦那様や結城を特別意識する事もなく、業務だけをこなしていた。
夜、屋敷中が寝静まってからがあたしの細やかな自由時間。
「見違えたね」
「何がですか?」
「アンタの仕事っぷりさ。
初めは、使い物にもならなかったっていうのにさ」
それは禁句ですよ!
だけど、嬉しいな。
一番近くであたしを見ている人から、お墨付きの言葉を貰えるなんてね。
お初さんのお陰なんですよ。
真っ直ぐな気持ちで、仕事に打ち込めたのは。
「この仕事、楽しいかい?」
「はい!!」
そりゃさ、自由な時間も休みに友達と会えないのは寂しいよ。
けど、それ以上に沢山の初めての事に挑戦出来た事が、今のあたしにとって大収穫。
「アンタが継いでくれたら心置無く引退出来るのにさ」
──えっ!?
ポツリ、と呟いたお初さんの言葉が耳に残った。