【短編集】フルーツ★バスケット
「悲しい顔は似合わないよ。
あと1週間もしたら、俺たちは皆から祝福を受けるんだから、ね」
「旦那様、勝手に色々決めないでください。
あたしだって心はあります」
「例えば?」
──例えば。
「貴のところには行かせないよ!?」
優しい口調ではあるけど、捉えられた力強い眼差しから逃げる事は出来ない。
「君は、俺を刃向かったりはしない、だろ?」
「それは──」
お手伝いとして、旦那様に遣える事は何よりも大切な事。
だけど、その境界線を越えたら、あたしは…何?
「旦那様、なぜ元奥様を忘れようとなさるのですか?
先立たれた奥様可哀想です」
この間は、新しい恋を始めようとする旦那様を応援したい。
そう思っていたのに、
その当事者に自分を置かれると、全く違った感情に変わっている。