【短編集】フルーツ★バスケット

 もう夜更けもいいところ、日付もかわって1:30を過ぎた頃。

 癖になっているのか、当たり前のように、いつものようにチャットルームへ。

 掲示板には、会話を待っている人が沢山待機している。

 いかにもって感じのものばかり。

 そんな中一つの掲示板に目が留まる。


【貴女の時間の許す限りゆっくりお話しませんか?】

 この人となら
 話してみてもいいかな。

 直感でそう感じた。

 名前欄をみると
【ジュン 31歳】と記されている。

 6つ年上か

 この掲示文句に惹かれるように入室する。

 これが彼との始まり。

《こんばんわ、お邪魔します》

《こんばんわ
 今日はどうしたいの?》

 私何やってるんだろう?

 頭の隅っこにそんな素朴な疑問が沸く疑問とは裏腹に、この男の人の質問にちゃんと答えてる。

 今も

《パジャマは前開きボタン?
 それともトレーナーのようなもの?》

《前空き》

《じゃ、一番上のボタンだけ外してみて》

《上だけでいいの?》

《いいよ》

 それなら……って。
 オイっ! 

 勝手に答える自分に突っ込むも文字を打つ手は止まらない。

 相手は顔が見えるわけじゃないのよ!

 何言いなりになってんの!

 まだ理性がある自分が未知の自分に問いかけるも、未知の自分に無視された。

《今どういう状況?》

 自分の姿を見る

《ブラが少しだけ…覗いてる》

《寝る前なのに付けてるの?》

《……うん》

《じゃ、もう一つ外せる?》

《……うん》

 だから、何やってんのよ!

 まるで、一種の術に掛かったかのよう。

 隣の部屋では子供と旦那様が寝ているというのに。
 ゆっくり、ゆっくり……文字のやり取りが進む。

 強い言葉で責めてくるわけではない。



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