舞い誇る華
「面(おもて)を上げなさい 瑠璃」
土下座をする瑠璃を見て鈴姫は止めるように口を開く。
「貴女が気に病むことはありません
まだ 日が浅いですし 仕方のないことですわ」
「鈴様……」
そう鈴姫に言われ少し涙ぐんでいる瑠璃は呟く。
その様子を気にしていないのか鈴姫は鈴蘭に話しをふった。
「他に何かお聞きしたい事はございますか?」
「あの…そのー… 電話がないってどう言う事ですか?それに撮影って訳でもないのにどうして着物や髷を結っているんですか? これじゃあまるで、」
まるで 昔の江戸時代みたい…
瑠璃と八手はその言葉を聞くとキョトンとした顔で鈴蘭の方を見る。
鈴姫は相変わらず微笑みを崩さない。
「クッ ハハハハ
兄貴 何可笑しな事言ってんっすか~」
すぐにキョトンとした顔から吹き出したのは八手だった。
八手はガハガハと盛大に笑いこけ、隣に座っている鈴蘭の肩をバシバシ叩く。
イタッ 痛いっと内心思いながらも不思議そうな顔をして隣にいる八手の方を見た。瑠璃も可笑しそうにクスクスと笑っている。
「当たり前じゃないっすかー
ここは天下の徳川が治めている国〝日本″なんすよ~? 異国じゃあるめえし
…そういや兄貴 髷結ってないっすね?」
――――――――――〝天下〟…〝徳川〟…〝日本〟…〝異国〟?
結っていてもおかしくない とばかりにじーっと鈴蘭の髪の毛を見る八手に鈴蘭は聞こえているはずもなく言われた言葉を頭の中で繰り返していた。
そして鈴姫は鈴蘭に追い撃ちをかけるように口を開く。
「桜も〝知っている″と思いますが
今は 〝元治元年〟ですわ
ですから何か疑問をもつような事などないとは思いますけど…」