舞い誇る華
 
瑠璃は横にいる鈴蘭の方を心配そうに見ているがどうしていいのか分からず、チラチラと鈴姫の方を見て助けを求める。

八手にいたっては、ただオロオロしているばかりだ。


暫くその様子を眺めていた鈴姫だが、このままだと収終がつかなくなると思ったのかようやく口を開く。



「………桜 他に、何かお聞きしたいことはありますか?」



その言葉に 鈴蘭は、はっとした表情を見せ口を開きかけるが、そのまま何も言わず俯き、唇を噛み締める。

すると 鈴姫はゆったりとした動作で立ち上がると障子張りの窓に手をかけた。


「桜は 此処が初めてなのでしょう?
だから…そんなにも戸惑っている
…違いますか?」


鈴蘭は顔を上げ 鈴姫の顔を見る。

鈴姫は鈴蘭と目が合うと微笑んで見せ、障子張りの窓を開けた。

そこに在るのは、ちょっと前まで自分達がいた町並みと雲一つない青空。



「私(わたくし)も 同じです
此処が何処だか分かりません
下手に外へ出れば迷ってしまいます 土地勘が全くありませんし…城(なか)も…未だに解らないことだらけですわ」



城下を見つめながら話す鈴姫は背中に哀愁を漂わせる。


だが、次の瞬間上を向き話しを続けた。


「ですが 〝独り″ではありません
瑠璃が一緒ですし それに…桜と八手に巡り逢えました
あちらに居れば 今こうしてお二人に巡り逢えなかったかもしれません
私(わたくし)は嬉しいですわ
お二人と〝縁(えん)〟が繋がって

ですから 桜どうか安心してください
一度繋がった縁はそう簡単に切れたりしません
桜の探人はきっと今も元気に桜を探しておられますわ
早く… 〝巡り逢える事を信じて〟」


鈴姫が言い終えると生温かい風が吹き抜ける。
暫くその場は静寂に包まれたが 鈴姫の背中を見つめていた鈴蘭が意を決して口を開く。

「あの、さっきの話し、あたしを――――」



鈴蘭の言葉を聞き終わると後ろを振り返る鈴姫。

 
< 109 / 159 >

この作品をシェア

pagetop