舞い誇る華
「待宵太夫。山南様がお見えでありんす」
「ここまでで平気ですよ 小梅さん
後は…」
声をかけるが返事が返ってこず、襖に手をかけようとした少女…小梅に隣に立っている男…山南がそれを制した。
小梅はそう言われ、一礼するとその場を後にする。
その姿を見遣ると山南は襖に手をかけた。
「失礼します」
襖を開けると探す手間もなく正面の窓際の近くに座っている目当ての人物を見つけ声をかける。
「月見ですか?待宵(まつよい)さん」
待宵と呼ばれた女は手に煙管を持ちひじ掛けに肘を立てて月を見上げていた。
月明かりに照らされているその姿は妖艶。
視線を月からそらす事なく外に向かってふうっと息を吐き出すと口を開く待宵。
「どうしたんだえ? きょうはやけに早いじゃあねえかい」
「貴女の日ですから…
いつもより少し長めにお話したくて」
「フッ…相変わらずだな」
待宵の言葉にクスクスと可笑しそうに笑う山南。
その山南の笑いに 待宵は漸く月から山南の方へと顔を向ける。