舞い誇る華
 

―――こいつ…一体何が目的なんだ?
何処からかの廻し者にせよ
何故異人なんだ?異人なぞ警戒されるに決まってる
それとも…





「稔麿さん?」

賢磨の呼ぶ声にハッと我に返る稔麿。
視線を賢磨の方へとやるとそこにはボーッと、自分達の事を見ていた稔麿を不思議がる賢磨と心配そうな表情をしている奈月が見ていた。

「どうしました?そんな難しそうな顔して
あっ 朝飯なら出来てますよ
今日はちゃんと魚焼きましたんで文句言わずに食ってくださいねー」


賢磨は先程までの稔麿の顔を再現する為、自分の目尻を上に引っ張り眉間に皺をよせかなり大袈裟につくって見せる。

隣にいる賢磨の顔を見た奈月は思わず笑ってしまうが視界にジロリと睨んでいる稔麿が入り急いで笑うのを止めた。

そんな二人の様子に気付いていないのか、賢磨は話続ける。


「ったくあんまり我が儘言わんで下さいね
自分 女中じゃないんで
男なんですからそりゃ作るもんとか限られてくる訳っすよ
そんな汁物の味が薄いだの濃すぎるだの、焼魚がないと食わないとか、煮つけが全然染みてないとか、しまいには野菜の刻み方が気にくわないとかそれ、もう自分の料理全否定じゃないっすか!!
そんなに文句つけるなら自分で作って下さいよっ
それが嫌ならもう何も言わないで下さいねっ!」


普通に話していた賢磨だが思い出してきたのか、徐々に声が大きくなり言葉が刺々しくなっていた。

奈月は驚きを隠せず布団の上で胡座をかいてる稔麿と隣にいる賢磨を交互に見る。


だが、当の本人は興味無さげに欠伸をし、お腹をポリポリと書いていた。

 
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