舞い誇る華
「下賤な輩を側に置いとると御聞きどしたが、流石は江戸のお姫(ひぃ)さん
若い男を拾ってきはるとは…
靖親様御一人では満足出来ひんと申すのか、はたまた余程男に色目を使うのが好ましいのか
…何れにせよ 何故この様な愚行を靖親様が堪忍してやはるのかが不思議やわ」
軽蔑、憎悪が入り交じった瞳で鈴姫を糾弾する蘇芳。
だが、鈴姫はただひたすら蘇芳の自分への中傷を浴びていた。
そんな鈴姫の隣で給仕をしていた瑠璃は主を侮辱している事にとうとう我慢出来なくなり、蘇芳を咎める様に口を開く。
「蘇芳様っ!少しお言葉が過ぎるようでは?!」
「瑠璃」
声を荒げる瑠璃に静かに鈴姫は制す。
「…どないやら女中の躾までなってへんようや」
自分に意見する反抗的な態度をとる瑠璃に蘇芳は目を細め見た。
「申し訳御座いません
この者に代わり非礼をお詫び致します」
鈴姫は素直に謝罪を口にして蘇芳に頭を下げたが、頭を下げられた本人は気に入らないといった様子で腹立たし気に言葉を発する。
「鈴姫
よもや自身の立場をお忘れおへんか?
そなたは曲がりなりにも靖親様の正室
軽率な行動は慎みよし
たかが江戸の小娘
若いと言うだけであろう
私が側室なのもそなたでは満足出来ぬからじゃ
思い上がりも甚だしいっ
これ以上、嶋岡寺家に泥をかけぬよう 分を弁えよ
山吹行くぞ」
「は、はい!」