舞い誇る華
事の成り行きを蘇芳の後ろで不安気な顔で控えていた矢吹と呼ばれた女中。
吃りながら返事をし着物を翻し部屋を後にする蘇芳の後ろに着いていく。
一方的にやって来て、言いたい事を言って帰って行く蘇芳の後ろ姿を、顔色一つ変えず無表情で見る鈴姫、悔しそうに顔を歪め涙目になっている瑠璃、手で口を隠し難しい顔をして考え込む八手。
三人それぞれ 違う表情で蘇芳が部屋から出て行くのを見つめていた。
そしてパタリと襖が閉じると、次は反対の襖がスッと開く。
「おはようございまーす…って みんなどうしたの?」
今の重苦しい雰囲気とは正反対の明るい声で挨拶が聞こえ、顔を向ける。
襖から顔を出したのはきょとんと首を傾げる鈴蘭だった。
「桜… 御早う御座います
昨晩はよく寝られましたか?」
「ええ お陰様でぐっすり寝られました」
先程の無表情とはうって変わり微笑みながら鈴蘭に挨拶をする鈴姫。
鈴蘭は鈴姫の問いに爽やかな笑顔で答え、八手の隣に座った。
「…今、桜様の分も御用意致しますね」
「あっ 自分でやりますよ」
「いえ、瑠璃の役目ですから
ごゆるりと座られてて下さい」
鈴蘭が座ると同時に瑠璃が立ち上がると必死に笑顔を取り繕い給仕の準備をする。