舞い誇る華
「あ、兄貴っ?!」
八手の素っ頓狂な声を無視して襖を開ける鈴蘭だが、勢い余って襖はスパーンっと小気味良い音をたて横にスライドする。
「桜様? 如何なされたのですか?」
襖を開けた先に桜の分の朝食を持って目を真ん丸している瑠璃が居た。
「桜 」
凛っとした声で呼ばれた鈴蘭は後ろを振り返り鈴姫の方に視線を合わせる。
「急いていては見えているものも見落としてしまいます
桜のご友人方ならきっとよしなに計らってくださる素敵な方がお側にお出でですわ」
「でも、…」
優しく諭すように話す鈴姫に、鈴蘭はそれでも納得いかない様子で渋る。
「其れに腹が減っては戦は出来ぬと申しますでしょう?
先ずは腹拵えをしてからでも遅くはないと思いますわ」
「…すぐうぅぅぅ
「「「……」」」
鈴蘭が口を開きかけたとき、鈴姫の言う通りだと言わんばかりにタイミング良くお腹の虫が鳴き出した。
あまりの盛大な音に八手と瑠璃、お腹の音の張本人の鈴蘭は一瞬黙りになる。
そして、二人よりも早く我に返った鈴蘭は顔を真っ赤にさせ、恥ずかしそうに座っていた場所へと座り直す。
そんな鈴蘭の様子を可笑しそうに見た鈴姫は直立不動の瑠璃に声をかける。
「瑠璃」
「は、はいっ」
鈴姫の声に漸く動き出す瑠璃は恥ずかしそうに俯いている鈴蘭の前へと食膳を置く。
その横では必死で笑いを堪える八手。
無論、八手は横から殺気漂う鈴蘭に終始睨まれてたのは言うまでもない。