舞い誇る華
「あーにき まだ怒ってんすかー?」
処変わって ここは人々で溢れかえっている城下町。
朝食をとり終えた鈴蘭と八手は視察と言う名目で城を出る許可を貰い雛菊達を捜していた。
「あにいっ」
返事をしてくれない鈴蘭に再度呼び掛けようとしたら何かが顔に衝突し鼻を打つ八手。
距離を置くと、後頭部を押さえた鈴蘭が痛そうに振り向いていた。
どうやら八手の鼻にぶつかったのは鈴蘭の頭だったらしい。
「ずい゛ま゛ぜん 兄貴
でも 急に立ち止まんないで下さいよー
何があったんすか?」
鼻を抑え、余程痛かったのか涙目になっている八手が鈴蘭に尋ねると鈴蘭は前方を指差す。
八手は恨めしそうに指をさされた方向に視線を向けるとそこには、人だかりが出来ていた。
「あ? 何だありゃー」
「大道芸人…?」
首を傾げる二人は顔を見合わせ、よく見えるように側まで近寄る。
「せやから謝ってるやないですかっ
この上どうしろ言うんです?」
「おいおい
それで謝ってる言うんか?
なあ?」
野次馬の間から見えたのは、離れた処で一人の女と五人の男が此方にまで聴こえる声で言い争っている場面。
遠巻きに観ている野次馬に何があったのかと尋ねるが、女が先に吹っ掛けただの痴話喧嘩だのあまり統一性のない返事ばかりで謎が深まるだけだった。
「なーんか 似たようなのをつい昨日見た気がするなー
ねえ? 八手さん」
「…ソウデスネ
いやー…もうホント…
あっ兄貴な、何だか雲行きが怪しくなってきやしたねっ」