舞い誇る華
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―――で、〝あの人″じゃなかっただけ良かったが だからと言ってこいつってーのもな…
数歩先を歩く無表情の男を一瞥すると思いっきり眉間に皺を寄せ、屯所でのやり取りを思い出す藤歳。
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「失礼します」
そう言って襖を開けたのは山南だった。
山南は視線を感じたのか藤歳の方を見るとにっこり笑いかけ土方と近藤に話しかける。
「話の腰をおってしまいましたか?」
「いや、丁度良い
藤くんに同行者を告げる処だったからな」
「そうですか それなら入らせていただいても宜しいですか?」
「ああ、構わん
入ってきて来れ」
その言葉を聞くと山南は一歩踏み出し、襖を越えた。そして斜めに身体を向けると襖に向かって声を掛け招き入れる。
どうやら 同行者がいたらしい。
「――失礼します」
「件の任より戻りました
ご報告を…」
男は部屋に入る前にお辞儀をし、頭を上げると抑揚のない声がゆっくりと止まる。
頭を上げた瞬間、男の目に飛び込んできたのは今まで供に過ごしてきた上司の同じ顔。