舞い誇る華
「こう言う時…携帯があればなあー…」
ゴロンと寝返りをうつと、ボタンの操作で簡単に相手に繋がる現代の便利な機械を思い出す。
何の手掛かりも無い人を捜すのがこんなにも大変だとは、今回の事で身を以て思い知らされた鈴蘭だった。
―――――京都にはいないのかなあ もしかして…あたし一人だけ此処に来たって事も有り得る…それとも…
遠慮がちに襖の奥からトントンっと音がし、考えに耽っていた鈴蘭は急に現実へと戻される。
「桜様? いらっしゃいますか?」
「あっ はい!」
そう返事をすると、すっと襖が横にスライドする。
鈴蘭は慌てて起き上がり、開いた襖の方へ顔を向けると声の主と目があった。
「申し訳御座いません
お休みになられてましたか」
起き上がる鈴蘭を見て、寝ていたと思った瑠璃は申し訳なさそうに眉をハの字に下げる。
「あっ違う違う
寝てないから大丈夫よ
それよりも…何かあったの?瑠璃」
誤解を告げると鈴蘭は、珍しく一人の瑠璃に問い掛ける。
瑠璃は鈴姫付きの侍女である為、常に鈴姫の傍に居り、余程の事が無い限り滅多に離れることが無いのだ。
そんな瑠璃が、何故一人で自分の処に来たのか皆目検討もつかない鈴蘭だった。