舞い誇る華
「兄貴 部屋に居んのか~?
はっ!もしや 俺に黙って城下に…」
ブツブツ独り言を呟いている八手は朝餉(あさげ)を取った後、姿が見えなくなった鈴蘭を捜して城内を練り歩いていた。
「こうしちゃ居られねえっ!
俺もすぐ城下に…ってここ何処だ?」
どうやら鈴蘭を捜してあちこち城内を歩き回っていたら、気付かぬ内に見知らぬ廊下へと出てしまったようだ。
「マズイ… どっかに誰かいねえかな」
取り敢えず、人に訊こうと辺りをキョロキョロ見回すがこう言う時に限って見当たらない。
早々に痺れを切らした八手はチッと舌打ちをすると来た道へと戻る為、踵を返す。
その時、視界の角に動く何かを捉えた。
――――ん? あれは―…
その〝影〟に興味を持った八手は持ち上げた足をゆっくりと戻し抜き足で近付く。
悟られぬ為に声が訊こえる位置まで近付くと気付かれないように息を潜める。
「――――くれぐれもこの事は内密に …よろしおすね?」
チラリと曲がり角から覗き見すると一つの影がコクンと上下に動くのが見えた。
だが、どうやら影は〝一人〟では無いらしい。
その影の他に命令を出している様な女の声がし、正体を捉えるようと目を凝らす。