舞い誇る華
―――――あいつぁ…確か、いけすかねえ姫さんの侍女じゃねえか
その視線の先には、数日前に蘇芳の後ろをオドオドとくっついて来た侍女、山吹の姿があった。
―――――何だってこんな処に?夕餉(ゆうげ)の相談か何かか?
「…そう見えんのなら、俺も落ちたもんだな」
――――――何を〝隠して″やがんだ? あの侍女、確かに〝内密〟にって言ってやがった
はっきりと訊こえたんだ 間違いねえ
「あの蘇芳って姫さんの差し金か…?」
そう呟いた時、背後から鋭い視線を感じ八手は一気に身を強張らせる。
――――しまっ「八手さん…?」
名前を呼ばれたことにより反射的に振り向くと、そこには見知ったシルエットが佇んでいてホッと胸を撫で下ろす。
「…此処から先には厨(くりや(キッチン))しかありません
一体何用です?」
侮蔑するかの様な眼差しをする瑠璃に八手は不服そうに眦を少し上げる。
「お前、その眼止めろ
胸糞悪りぃ」
「ど、どの様な眼でしょうか?おっしゃってる意味が解りません
私は普通に見てるだけですよ?」
途端に不機嫌になった八手に恐れるが、負けまいと吃りながらも反論する瑠璃。
若干、二人の間に距離があるが自分との距離を詰めてこようとする八手に瑠璃は半歩下がる。