舞い誇る華
「…ってあら?瑠璃はん?」
「山吹様…」
恐る恐る声をかけてきたのは、先程まで八手の視線の中にいた蘇芳姫付きの侍女、山吹だった。
山吹と瑠璃は互いに八手の陰で見えなく、近付いてきた山吹が漸く気付き瑠璃も声を上げたのだ。
「そ、そない 〝様付け(さまづけ)″はお止めおくれやす うちはただの侍女なんどすから」
アタフタと激しく手を左右に動かし否定する山吹に居心地悪そうに視線を床に落とす八手。
「で、でも…」
「畏まれへんでおくれやす うちは姫さん付きの侍女同士、瑠璃はんとは仲ようなってたいと思おとるんどす」
親しみのこもった笑みを浮かべる山吹に徐々に強張りが溶ける瑠璃。
「御迷惑どすか?」
「い、いえ!とても嬉しゅう御座います
そう言っていただけるなんて有り難い事ですわ」
「良かったあ」
花が咲いたような満面の笑みを見せる山吹につられる様に瑠璃の顔が次第に和らいでいく。
そんな瑠璃の姿を見た八手はその場から静かに立ち去った。
「そうや…会話を遮って堪忍どっせ 何や大事な話をしとったんでっしゃろ?」