舞い誇る華
 


無言で立ち去った八手の姿を視界の角に捉えると山吹は瑠璃に尋ねる。


「…いえ、お気に為さらないで下さい」


「?…そうどっか
あっ!せや 城下で評判のお菓子がおますの
良かったら食べへん?えらい美味どすねん
丁度、厨の近くやし 是非」


「えっ… あっそうなんですか? ありがとうございます
それじゃ遠慮なく頂きます」


山吹の申し出に瑠璃は礼の言葉を述べると厨の方へと歩き出す二人。
笑顔で話し掛ける山吹に、瑠璃は後ろをチラリと見やり八手の背を捉えると、白い紙包みが皺になるのも構わず拳に力を入れた。

そんな瑠璃に気付いていないのか山吹は同意を求めるかのように「ねっ瑠璃はん」と呼び、その声で瑠璃は急いで頭の中身を切り替えて受け答えをする。








〝ねえ 瑠璃?″

〝はい 何で御座いましょうか?″


〝八手さんの事なんだけど…″





「あっ八手さん!」


「あ…兄貴」


今までの己の行いを思い出しながら長い廊下を歩いていた八手はあれだけ捜し回った朝餉以降の捜し人、鈴蘭と出くわす。

考えに耽っていて急に現れた鈴蘭の姿を見て驚きつつもホッと安堵した八手。


「丁度良かった
今から城下に行こうと思うんだけど八手さんも行きますか?」


「はいっ!無論、御供させて頂きます!」





〝その様子だと心配ないと思うけど、許さないでね 瑠璃″


〝桜様…?″


 
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