舞い誇る華
「あ、あにきっ 高杉の兄貴!!」
バタバタ と暗闇の中を走り名を呼ぶ男。
徐々に目的の人物に近づくとスピードを下げて息を整える。
「どこに行ってたんです? 探しましたよ もう…」
そこで言葉を切り、目の前に座っている男の周りを見て溜め息をつき、血生ぐさい臭いにわざとらしく鼻を摘みながら話し始めた。
「兄貴ぃぃ 本当に何してんすかぁぁ こんなに〝死体〟増やしちゃって…」
高杉と男の周りには人が転がっていて辺り一面には赤い液体が広がっている。
「うるせえな… こいつ等が絡んできやがったんだ 文句あんのか?俊輔(しゅんすけ)」
そう言いべっとりとこびりついている頬から血を拭い、立ち上がると下敷きにしていた人から首に刺さったままの刀を抜き取った。
刀についている血を払い鞘に納める。
「あーあ ったく…その返り血目立ちますよ?どうせ〝殺る〟なら 地味に殺ってくださいよー 兄貴はやる事成すこと派手すぎる」
俊輔は高杉を見ると文句をつけ始めた。
「これが 昼間だったらどうするんですかっ そんな恰好で歩き回ったら一発でしょっぴかれますよ?
夜だったから良かったものの……」
グチグチと文句を言う俊輔を尻目に高杉は自分の着物の臭いを嗅ぐ。
これもう駄目だな…
血が染み付いてとれねえ
「人の話し聞いてますか?! 兄貴っ」
「俊輔ー お前何か〝気付いた″か?」
「はあ 気付く?? …敵っすか?」
真剣な顔付きになった俊輔を見ると顔を上げる高杉。
「………そうか」
そう呟くと高杉は 暗い暗い闇夜の中で輝く月をただぼんやりと眺めた。