短編集
雨の日だけは…。




『………入る?』









雨が降っていて
少し肌寒い今日





私は傘を家に忘れました







雨は昼頃から降り始めて
4時の今も降り続けている





そんな訳で濡れて帰ろうと
昇降口で止まっていた足を動かそうとした時






同じクラスの赤沢君に声を
掛けられたのでした





「えっ………良いの?」

『良いから言ってんだろ』

「あ……そっか」





男の傘に入るくらいなら
濡れて帰った方がまし


そう思った時、赤沢君は
独り言の様にボソリと声を漏らした



『濡れて帰ると風邪ひくよ』



………風邪ひくのは嫌だな





単純な理由だけど
相合い傘なんて嫌だけど
今だけ我慢すれば良いや




そう思った







「…何か本当すいません」

『いや…別に
俺から声掛けたんだし』

「そっか……」



赤沢君は普段物静かで
表情はいつも同じ

………無表情


だからという訳ではないんだけど
どこか近寄りがたい


正直一緒に帰ってる今
会話が長続きするとは
とてもじゃないけど思えなかった。



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