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1人になった、生徒会室。
「璃昂ちゃん…か」
璃昂は何も覚えていない。
俺が兄ってこと。
江川家の本当の娘ではないこと。
「信…どうした?」
「榮治…」
榮治は俺の大親友。
唯一、何でも言える相手だ。
「屋上で…話したのか?」
榮治には、全て話してある。
だからこそ生まれる安心感がある。
「いや…話せなかった」
「だろうな…お前ほんと優しいもんな」
「そんなことねぇよ。ただ…」
「ただ?」
「俺は…璃昂が不安そうな顔を、見たくないだけだから」
そっか、と榮治が呟いた。