ill
ちらりとアークエンの額の傷を見つけたイルが、当人よりも痛そうな顔をした。
「…こういうの、嫌なんです」
「うん…ごめんねホントに」
イルがアークエンの前髪をなぞるように手を振ると、額の傷は一瞬で消えてしまった。
「痛かったですね、アークエン」
…その声は女。
・・・・
口調はそのままにイルが変わった。
「ううん、急だったし、痛みなんて分からなかったよ」
ありがとう、とほほ笑むアークエンの前にいるのは一回り小さな身体の少女。
「人間なんて嫌いですよ。…アークエン以外は。」
アークエンの額の傷の代わりに、イルの額にうっすらと傷が浮き出たが、イルの傷は一瞬で癒えてしまった。
「私は魔族なんて嫌い。…イル以外は、ね?」