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人間とはなんと愚かで、臆病で、そして卑劣で、誇りを持たぬ生物であろうか。
その中に、貴女のような人がいるから、より輝いて見えるのかもしれない。
小さな身体に穴をあけて、真っ赤な水たまりの中心で、命が尽きようとしていた少女。
助けるつもりなんてなかった。
興味本位で尋ねただけ。
「悲しいか?間もなくお前は死ぬ」
生きるもの全て、生まれ落ちた瞬間から、『死』へと向かってゆっくりと歩き出す。
それが少し早まっただけ、悲しむことはない、みんな同じ場所へ行きつくのだから。
「………」
横たわる少女の口がわずか、動いた。
魔族はその唇の動きを読んだ。
『 かわいそうに 』
私が?かわいそうなのは死を目前にしたお前だ。
村を焼かれ、親を目の前で殺されて、身体に穴を空けて。
「…なぜ?」
理解のできない私に向けて、少女は…アークエンはもう一度唇を動かした。
『 ………あなたが、―――――――だから 』