同じ空の下で
真鈴の手が離れる。
「しまった! そいつを押さえろ!」
貴田先生が叫ぶ。もう、遅い。
真っ白な光が僕を包み込む。少しだけ浮いた足元。
時が、止まる。

僕を包む小さな札。そして、それは貴田先生にも真鈴にも、取り囲む連中にもそれぞれ発生していた。
助かった……。それが僕の、最初の感想だった。だけど、誰が?
僕はぐるりと見回してみる。すると、真後ろに小さな光が見えた。僕が真鈴だと思って追い掛けた光。あれは真鈴じゃなかったんだ。
とりあえず、この能力がどれくらい持つかは判らない。ここから離れよう。……その前に。
ふと思って、僕は真鈴の記憶を確かめてみた。そこには、中学校入学からの記憶しかない。僕を追う為に作られたってわけか。
あの時、小さな小屋の中で僕が真鈴の記憶をちゃんと見ていたらこんな風にはなってなかったのかもな。でももう起きた事は仕方ない。真鈴に情が全くないわけではなかったけれど、僕は踵を返し、動かなくなった人込みを掻き分けて光の方へと向かった。
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