同じ空の下で
遠い昔のことだった気がする。

僕は小さな公園にいた。
「こんなとこで何してんの?」
そこへ女の子がやって来た。真っ白なブラウスに、紺色のスカート。
僕が黙ってじっと見ていると、彼女は隣のブランコの上に立ち上がった。前後に揺らし、ゆっくりと立ち漕ぎを始める。
まだ化粧なんて施されていない、綺麗な肌。髪は肩まで。もちろん真っ黒。それが風に乗って揺れる。少し垂れ気味の目尻が、幼さに拍車をかける。決して美人とか、可愛いとか言われるタイプではないだろうけれど、どこか惹かれるところのある顔だった。
彼女は僕の歌が好きだった。
「次いつライブしてくれるの?」
彼女は嬉しそうに言った。

僕はそれに応えることが出来なかった。

その直後に父親が死に、母親も死んだ。それをきっかけにして、僕は記憶を操るようになる。

そして失う。大切なことを。
あの約束を。
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