同じ空の下で
その日の夜、眠りに就く前にひとつだけ頭に引っ掛かったキーワードがあった。
「思春期の真ん中」
確かそう書いてあった。いちいちベットを抜け出し、携帯を開いて確認するのも面倒だったので100%とは言い切れないが、確かにそう書かれていたはずだ。
思春期の真ん中。何故だろう? その言葉が頭の中でずっとぐるぐると回り続けている。もう33にもなって、思春期なんて言葉に馴染みがあるはずなどない。真ん中は問題外として、思春期の縁にすらかすりもしない。
僕は仕事をしている。しかも、今じゃそれなりの立場だ。僕は結婚して妻もいる。
思春期の真ん中? 今更どこからそんなものが発生するというのだろう?
「おやすみなさい」
鏡台の前で髪の毛をまとめていた妻が寝室の電気を消し、同じベットへと入って来た。
僕の頭の中で回っていたキーワードも、まもなく消えていった。
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