同じ空の下で
失った記憶の中。ということは、小説や映画のようにタイムスリップでもしたというのだろうか?
「奥さんも自分自身の失われた記憶の中にいます」
「そうか……でもおかしいな、僕には過去の……いや、未来の記憶がまだある。記憶の交換という仕事をしていたことや、あの水族館までの道で君に出会ったことや」
「それは徐々に消えていきます。あなたたちがやってた仕事と同じで、こちらでの記憶つまり失った記憶へと塗り替えられていくのです」
僕はふと思い立って、部屋の隅にあった鏡を覗き込んでみた。
僕は僕ではなく、失われたあの頃の僕になっていた。
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