同じ空の下で
振り返るともうそこにペンギンの姿は無かった。僕はもう一度鏡を見る。これが僕? 中学生ぐらいだろうか? 髪の毛は若々しく、不精髭なんてまるで無く、瞳は生き生きとしている。なにもかもが希望に満ち溢れた瞳。
「あら? 自分に見とれちゃってるの?」
突然の声に僕は驚いた。さっきの彼女が右手にジュースを持って立っていた。
「大丈夫よ、顔に傷なんてついてないから。はい、これ飲んで」
小さなグラスに入っていたのはオレンジジュースだった。そんなに喉が渇いた気はしなかったが、口にすると一息に飲み干してしまった。
顔を上げると、彼女が笑った。
「よかった。元気になったみたいね。おかわり、いる?」
僕は首を振り、空のグラスを彼女に渡した。「ありがとう」
さっきペンギンが座っていた椅子に腰掛け、首をひねった後立ち上がり、椅子をくるくる回してもう一度座り直した。
彼女は笑いながら僕をじっと見ていた。僕は目を合わせていられなくて、視線を外すと机の上に「水川」と書かれたプレートを見付けた。
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