同じ空の下で
僕がペンギンの存在を割と自然に受け入れたように、妻も彼女を自然に受け入れた。自分のことは不思議には思わないのに、妻が話すペンギンを不信感なく(多少はあるかもしれないが)認めるのは何か変な感じがした。まぁ、ペンギンが話すところを見た瞬間、恐怖や怒りにかられペンギンをどこかへ追いやったとしても、可哀相な喋るペンギンがいた、という記憶が僕には残るだけで特に問題はないのだが。
とにかく妻は、ペンギンの為に大きなボウルに氷水を張り、ペンギンの足元へと置いてやった。ペンギンはそれを警戒したり喜んだりしたりもせずに足を突っ込んだ。ボウルから水がいくらか溢れ出したが妻は特に気にしなかったし、僕もそうだった。
とりあえず我々は三人で……いや、二人と一匹でテーブルを囲んだ。
「飲み物は何かいります?」
尋ねる妻に「いえ、けっこうです」とペンギンは答えたので、僕と妻の前にだけアイスコーヒーが置かれた。
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