真冬のひまわり
考えるよりも先に体が動けるとしたら
どんなにいいだろうか――

私のかつての想い人…
それも数ヶ月前に振られたばかりの奴の名前をさらりと言ってのけ、更には目の前で強烈な上目遣いを送るコイツを、できるかぎり威圧的に睨みつけると、私は椅子を蹴って立ち上がろうとした。

「ちょっと葵、どこにっ…」

「あたしの前で、柳澤の話題を出すなって言っただろ」

なんだか生ぬるいモノがこみあげてくるのを抑え込む。
目の前では叱られた子犬のようなポーズを完璧にこなして
可哀想にちぢこまる若菜。

「ごめん、ごめんってば!!ただ…あたしは葵がっ」

「…もういい。終わったことだから、蒸し返してほしくないだけ」


ちょうど担任が滑り込むように
入ってきたのを目の端で捕らえたため
私は行き場を失ったイライラを抱えたまま
もう一度席に座るほかなかった。


「あーそれではHRを始める」

無機質な声が響き、だらだらと顔を上げるかすかな音が響いた。


「さて――今日はみんなに紹介する人がいる」


…先程まで弛んでいた空気が
一気に張りつめるのを感じた。
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