真冬のひまわり
…ぁ、やばい。
目の前にいるヤツの口が
更にへの字になってゆく…。
叫んでしまってから
慌てて両手で口を隠してみたが。
時すでに遅し、だったわけで。
「ぁ…ごめ」
「それ」
謝ろうと開きかけた口を嘲笑うかのように
無表情のまま話を遮ると
私が持っていた真っ黒々助を指差した。
「へ?」
思わず間抜けな声が漏れる。
これって確か……河野のじゃ…
「ぼけっとしてないで、さっさと渡してくんない?」
すごい勢いで凄まれた私は
間髪入れずな素早さで鞄を手渡した。
…いや、手放した、だな…。
「どんくせぇのも、ほどほどにしろよな」
分厚い唇をきゅっと結び、
口角をくいっと上げて
似合わないニヒルな笑みを
口元に漂わせながら
ヤツはさっさと教室を後にした。
…なんじゃい。…腹立つなぁ。