真冬のひまわり
…曲こそ流していないが
一応イアホンをつけているため
ここで反応するわけにもいかない。
…しょうがないので
無視を決め込むことにした。
しばらくすれば諦めるだろう。
そんなに必死に振る話題など
私達の間にはないはずである。

…の、はずが。

…………
…………


「おい」


しばらく何事もなかったかのように
聞き流していたら
よりにもよって奴は
先ほどよりも強い声色で再度呼んできた。

…おいおい…。
勘弁してくれ…。

だいたい私は奴と話すことなどない。
それに私は、認めたくはないが
根っからの照れ屋である。
初対面の、それも異性との会話なんて
ないに越したことはない。
というかできるだけ避けたいのだ。
決して、ここまで執拗に無視する理由が
先ほど馬鹿にされたことに対する
腹いせというわけではない。決して。

…というわけで
もったいぶるように髪をかきあげ
いかにも「音楽鑑賞中」であることを
見せつけるかのように髪を耳にかけた。
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