二藍蝶
「すみません
 今夜、約束が・・・」

「何だ、女か?」

「はい」

浬は、顔色ひとつ変えずに
親父よりも、女との約束を
選ぶ。

「カイリ、お前
 センさんと女
 どっちが大事なんだ?」

「大事なわけじゃないが
 優先順位は、女だ」

「カイリ、おまえ」

浬の胸倉を掴もうとした塁の
肩に手を置く、セン。

「ルイ

 まあ、いい
 カイリの好きにさせてやれ」

その場を離れるセンは歩む足を
止めて言う。

「カイリ、俺の店の女
 全部食うなよ」

笑って、センさんはその場所を
後にした。

事務所から出た俺は、煙草を
銜えて、空を見上げる。

辺りは暗くなり
夜が訪れる・・・

ポケットから取り出した
ジッポーで煙草に火をつける

一台の車が停まる。

「カイリ、乗れよ
 センさんが
 送ってやれってさ」

「お前の運転はごめんだよ」
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