二藍蝶
「いいから、乗れよ」

開かれるドア
俺は、助手席に乗り込んだ。

二人は何も話す事なく
車内には音楽が流れる。

「ルイ、音大きくして
 この曲、懐かしいな?」

「ああ、昔よく、流れてた」

極道になるという思い

親父への憧れを、捨てられ
なかった俺が捨てたのは
藍・・・

藍を捨てて、ヤクザになった頃
ひとつの狭い部屋に、俺と塁は
ぶち込まれて、過していた。

弱いのに、大酒飲んで
道端で吐いては、また飲んで
を繰り返し、尻の軽い女を
抱いては、馬鹿騒ぎをして
遊びまわっていた日々が
今では懐かしい。

「カイリ
 お前、もう少し
 自分の立場を考えろよ

 お前の事をよく思っていない
 連中は、会澤組はもちろん
 俺達の組にも多い・・・」
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