二藍蝶
『一人で帰れるからいいよ』

『迎えも、いらないよ』

そう言ったのも、全て俺に
気づいてほしかったから。

ここから、居なくなること。

ここから、出て行くことを。

『どうして帰るなんて
 言う?』

もしかしたら、藍は
その言葉を待っていたの
かもしれない・・・

俺に止めてほしかった
のかもしれない・・・

それなのに俺は、藍を
気にかけてやるどころか
涙を流す藍よりも時刻を
気にした。

正直、あの時俺は
藍の涙を鬱陶しいとも思った

そして、ただ触れるだけの
挨拶代わりの口づけを交わし
俺は出て行った。
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