二藍蝶
「あの、カイリ・・・」

「何、君、カイリの
 知り合い?

 カイリなら・・・」

窓の外、こちらに向かって
駆け寄る女性の姿が浬には
見えた。

その姿は、ヒロ・・・

開かれる助手席のドア

「カイリ、お前に・・・」
 
カイリ・・・

貴方の名を呼ぼうとした

その時

車内から浬の声が聞こえた。

「セキ、行くぞ
 早く乗れ、ドア閉めろ」

「えっ、でも・・・」

「聞こえてるよな
 
 早く言うとおりにしろ」

怒った浬の声が、私の胸に
突き刺さる。

「ごめん」

そう言って、彼は
車に乗り込みドアを閉めた。

何も言えなかった、私。
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