二藍蝶
不安な瞳の、茉優。

「うん
 ちゃんと帰るよ
 
 ヒロ、連絡するから
 心配しないで」

走り出すタクシー。

私は、鞄の中
リップホルダーを取り出す。

色あせて、くたびれた人形

私は、そのホルダーの紐に
ぶら下がる鍵を見つめる。

浬・・・

貴方は、この場所に
帰って来てくれますか?

『勘違いだよ、ヒロ』

藍の可愛い声・・・

「カイリ、着いたぞ
 一人で帰れるか?」

「ああ、大丈夫だ 
 酔いは醒めた」

「明日の朝、迎えに来る
 
 例の話、お前の口から
 皆に話してくれ」

「ああ、分かってる」
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