二藍蝶
女性・お化粧室内

私は、個室に入る事なく
大きな鏡を見つめていた。

ううん

見つめてなどいない。

流れる水の音・・・

聞いてなどいない。

『遣るだけの事は、全て
 遣ってやる

 俺の、この命に代えても』

命に代えても・・・

怖くない

そんなの、嘘・・・

嘘だよ、浬。

貴方を失うかもしれない。

怖い、よ・・・

鏡に映る、私の瞳から
零れ落ちる涙。

私は、手の甲で拭う。

こうして

私は、涙を隠す。
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