二藍蝶
祖父の家には、三十分も
居なかっただろう・・・

俺は、要さんと一緒に
車の後部座席へ乗り込む。

「カイリ、これ
 持って行きなさい」

千夏さんが、俺の手に
お金を渡してくれた。

「ありがとう
 
 いつもごめん」

「今年も、また
 夏休みになったら
 泊まりに、いらっしゃい
 
 美味しいご飯作って
 あげるから」

「ありがとう」

走り出す、車内・・・
沈黙が包む。

要さんの、渋い横顔は
とても疲れているようだった。

俺は何も語らずに、窓の外を
見つめた。

見慣れた街並み・・・
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