二藍蝶
俺はただ、ボーっと
見つめる・・・

俺達を乗せた車は
昔と変わらない建物の前で
停車した。

俺は昔、この場所に
親父とお袋と俺の三人で
暮らしていた。

懐かしい場所・・・

「カナメさん、ありがとう」

ドアを開けようとした俺に
要さんは言う。

「カイリ、お前
 去年の夏に、この俺に
 言ったよな?」
 
『俺、極道になりたい』

「その想いは、もう
 捨てる事、できたか?」

「・・・・・・」

「カイリ、以前も言ったが
 ・・・・・・」

「このご時世
 ヤクザになんかなるな
 でしょう?
 
 そんな事、分かってるよ
 
 あれは・・・冗談だよ」
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