二藍蝶
「そうか・・・
 
 だったら、俺も出所したら
 田舎に戻るわ

 お前がいない都会は
 面白くねえからな

 待っててくれ・・・」

寂しげな弦の瞳を真っ直ぐに
見つめる浬。

「ああ、セキ
 
 お前がいないと寂しい

 待ってるからな」

弦の残りの刑期は9年半

気が遠くなる程の時間を
お前は・・・

肩を落す浬の頭に手を置く
父、庵。

その帰り、二人はある場所
に寄った。

高月正二、祖父の家。

「あらっ
 揃いも揃ってどうしたの?

 カイリ、よかったわねぇ
 
 本当に良かった・・・」

薄っすら、涙を浮かべる
千夏さん。

「さあ
 どうぞ、どうぞ」

正二の部屋・・・

浬は、いつものように手入れ
の行き届いた綺麗な庭園を
見つめる。
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