二藍蝶
俺は、今・・・

親父の背中を見つめながら
こうして炎天下で、汗を掻き
喉をカラカラにさせて
働いている。

「カイリ
 そろそろ、昼にしよう」

親父は寡黙で、俺に
仕事の件でああしろ
こうしろとは決して言わない

俺の姿を見ろ、見て盗めと
ばかりに、黒龍の潜む
背中を、俺に見せる。

毎日毎日、こうして親父の
背中を見ながら、俺は
気づいたことがある。

俺が憧れた、あの背中は
本当は、この背中だったんだ
ということ・・・

俺は親父が極道だった頃を
知りもしないくせに、その
一点にのみ憧れて、本当の
親父を知らない。

『彼の深い部分、全てを
 理解すること努力しなさい
 
 彼の上辺だけを見て
 カッコいいとか
 思っているなら
 それは間違いよ

 半端な気持ちなら
 憧れることなんて
 やめなさい』

『イオリを知れば
 お前は分かる

 自分がどう進むべきか』
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