二藍蝶
「母さん」

買い物袋をテーブルに置いた
母は、泣きじゃくる藍の
背中を擦る。

「カイリ、本当にヤクザには
 戻る気はないのね?」

「ああ」

「じゃあ
 ここで私とアイちゃんに
 もう一度、ちゃんと
 誓いなさい
 
 ヤクザには戻らないと
 誓えるわね?
 
 組が潰れるほどの
 一大事でも、絶対に
 戻らないと誓いなさい」

「・・・・・・」

『入江組が潰れる』

俺の組・・・

仲間達と築き上げた

俺の夢、憧れた場所。

答えられない、浬・・・

「何を迷うことがあるの?
 
 そもそも貴方はイオリに
 憧れてヤクザになった・・・
 
 貴方は、いったい
 イオリの何に憧れているの?
 
 憧れても、カイリは
 イオリには慣れない
 
 イオリには適わない」

親父には適わない・・・
そんなこと、分かってる。

「貴方に教えてあげる
 私もずっと何年も
 知らなかった事を
 聞かせてあげる」
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