甘く・深く・愛して・溺れて
『だから子供が出来るはずがないよな?』



『……私…馬鹿ね…。でも馬鹿でもいいの…馬鹿でもいいから…空人さんのそばにいたくて…』



今まで当たり前のように、なんでも手に入る環境で育ってきた紗耶香さん。



日本で五本の指にも入るような大企業の一人娘ともなれば、誰もが彼女をもてはやす毎日。



有り余る財力の中、欲しい物はどんな物でも与えられてきた彼女。



どんな贅沢でさえ、彼女にとっては現実にあり得るもので、



そんな恵まれた人生を歩んできた紗耶香さんにとって、



彼女を特別扱いしないで普通に接してくれた初めての男性が空人だった。



『私…月美さんがうらやましいわ…』



紗耶香さんは自分のバックから何やら取り出し、



『これ…空人さん…返します…』



と、空人へ手渡した。
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