甘く・深く・愛して・溺れて
空人が受け取ったのは、真っ赤なビロードの小箱。



『紗耶香には悪いと思ってる…。君にこんな思いをさせて…』



空人はそう言って、その小箱を開けた。



中にはキラキラと綺麗に輝くダイヤのリングが入っていた。



『これで…婚約解消…ね』



『親の決めた婚約だったけど、相手が君で俺は幸せだったよ、紗耶香…』



『私も…』



紗耶香さんは目頭を押さえ、微かに微笑んだ。



『月美さん…。あなたには空人さんと幸せになってもらわないとね…』



こんな状況の中で、あたしにまで笑顔を見せてくれた紗耶香さん。



きっと彼女はあたしよりどこまでも大人の女の人なんだ。
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