甘く・深く・愛して・溺れて
『ここにいたんだ?人いっぱいで探すのすげぇ大変だった…』



隆治君があたしを見つけたのは、



隆司が仕事に戻ってから、だいぶ時間が経っていた。



あたしはどれくらいの間、ボっーと海を見ていたんだろう。



気持ちを切り替えるにはちょうどいい時間だった。



『隆治君、どこにいたの?』



『ん?俺?兄貴のバイト先でのんびり寝てた♪』



海に向かって伸びをした隆治君は、今度は大きなアクビをした。



『兄貴とちゃんと話せたか?さっき店に戻った兄貴は何にも言ってなかったけど…』



『うん…まぁ、少しはね』



『そっか。まっ、きっと兄貴には伝わったんじゃね?よかったじゃん』



隆治君は携帯で時間を見て、



『どうする?帰るか?それとも、せっかくの海だし、もう少しいるか?』



と、あたしの方に視線を戻し、聞いてきた。
< 221 / 328 >

この作品をシェア

pagetop