甘く・深く・愛して・溺れて
『……月美?』



気がつくと、悲しげな目であたしを見る空人がいて、



………そう。あたし……初めて空人とのキスを拒んじゃったんだ。



『…ゴメンな』



空人は小さな声でそう言うとあたしから少し離れた。



『違う…違うの…ゴメンねっ…』



何が違うというのか……。



あたしの慌てた様子は、



二人の空気を余計にギクシャクさせた。



大好きな空人と、幸せなキス。



あたし……最低だ。



『時間も遅いし、帰ろう…』



しばらくの沈黙の後、



空人は先に車へと戻って行った。



空人の後ろ姿に、かける言葉も見つからなかった。
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