甘く・深く・愛して・溺れて
隆司との曖昧な関係を決めたのはあたしなんだ。



自分の今の気持ちに言い訳なんて出来やしない。



空人はどうして彼女がいるのに、あたしと自然にキス出来るの??



彼女と会っている時は、あたしのことなんて思い出さないのかな。



あたしにはやっぱりそれは無理だ。



今だって、こうして隆司とのキスの感触が唇に残っているの。



こんな状態のままの自分で空人を受け入れられなかったんだ。



『ゴメンね…空人』



『ん?何が?』



空人が聞き返した問い掛けに、



あたしは答えられるはずもなく、



帰りはお互い会話も少なくて、



その道のりは行きよりも、ずっと遠く思えた。



この時、初めて空人と一緒にいる時間を、空気を、



重く冷たいものに感じていた。
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