甘く・深く・愛して・溺れて
『あたし…空人の家…行っていいの?』



『当たり前だろ…さぁ、乗って!』



空人に促され、車のドアを開けようとしたあたし。



……………だけど、



『ちょっと待てよっ!』



後ろからすごい勢いで腕をつかまれ、そのまま引き止められた。



それは振り向かなくても分かる声。



『…隆司っ…』



見たこともないような真剣な顔で、あたしを見つめる隆司。



そしてさらに力強く、あたしの腕をつかみ、



『んでだよっ…何してんだよ…月美。行くな…行くんじゃねぇよ…』



その態度とは逆に、出てきた声は弱々しく、言葉は悲しみに満ちていた。
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