甘く・深く・愛して・溺れて
『誰って…見れば分かるだろ?月美は俺の女…彼女だから!』



そう勢いよく答えた隆司を見て、空人は静かに微笑んだ。



『ふ~~ん。そっか…じゃあ、君の彼女の月美を今日は少し借りるね』



余裕のある笑みを見せる空人に、隆司はますます腹を立てる。



『はっ?借りるとか、月美は物じゃねぇよ!んなの無理に決まってんだろっ!おぃっ、月美、帰るぞ…』



『月美、どうする?お前の彼氏君、怒ってるようだけど…』



隆司は空人を睨むようにして、あたしを引っ張った。



『…隆司っ、痛いっ…離して』



隆司のあまりの力に、つかまれたあたしの腕はジンジンと痛みだしていた。



『離してって?…月美…お前はそいつでいいのかよ……俺…待つって言ったけど、本当はそんな余裕なんかねぇよ…。俺…こんなの嫌だよ…他の男にお前を取られたくねぇんだ…』



目を赤くし、何度も目を押さえ、今にも泣きそうになる隆司。



あたしは隆司にとって、最低な答えを選ぼうとしているのに……



そんな隆司を見たら、またあたしに迷いが生まれてしまうようで、



なんだかまともに隆司を見ることが出来なかった。
< 87 / 328 >

この作品をシェア

pagetop