甘く・深く・愛して・溺れて
『さっきの彼氏君のこと、気にしてんのか?』



いつの間にか、あたしの隣りには空人がいた。



『空人は何か、あたしに聞かないの?さっきの隆司とのこと…』



『聞く必要ねぇだろ?別に…』



表情を変えることなく、空人はあたしの前にお茶を差し出した。



聞く必要がない……か。



空人ならそう言うことも想像出来たけど、



このタイミングで言われると結構ショックだった。



『それはあたしのことなんか、どうでもいいから?あたしのこと好きだったら、少しでも気になるんじゃないのっ?』



言うつもりのなかった言葉が次々と溢れ出す。



そんな取り乱した自分を止めることは出来ずに、あたしは言葉を続けた。



『空人はいっつもそう。きっと適当な気持ちなんでしょ?あたしがまだガキだからっ?それとも、あたしなんて彼女と会えない時の暇つぶしとしか思ってないんでしょっ』



あたしは今までの思いを初めて空人にぶつけてしまった。



それは、ずっと心の奥にしまっていた気持ちが一気に噴き出すようだった。

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